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口約束でお金を借りた場合の返済義務は?

「お金が入ったらちゃんと返すから」と口約束でお金を借りた場合、法律上の返済義務は発生するのでしょうか。

結論からいうと、契約書などは作っていなかったとしても、お金を受け取った時点で契約は有効に成立しています。

もし約束の期日までに返済できなかった場合には遅延利息などの形でペナルティが生じてしまう可能性もありますから、注意しておかなくてはなりません。

ここでは口約束でお金を借りた場合の返済義務の具体的な内容や、もし裁判などになってしまったときに予測されるリスクについて具体的に解説させていただきます。

消費貸借契約が成立するための要件

少し難しい話になりますが、お金の貸し借りの契約が成立するための法律上の要件について理解しておきましょう。

法律上、「お金を貸す、借りる」という契約のことを「金銭消費貸借契約」といいます。

この金銭消費貸借契約が有効に成立するための要件は、「実際にお金を引き渡すこと」です(こういう契約のことを要物契約といいます)

ですから、口約束はしたけれど、まだお金を実際に貸していないと言うような場合には、お金を貸す側は「やっぱりやめた」ということができることになります。

一方で、実際にお金が引き渡されてしまった後には、書面などによって契約書が残されていなかったとしても、契約は有効に成立することになってしまいます(つまり、口約束だから返さない、ということはできません)

基本的にはお金を借りた側が不利になるような仕組みになっているといことは理解しておかなくてはなりません。

口約束でも訴える!と言われたら?

上でも解説させていただいたように、お金の貸し借りの契約(金銭消費貸借契約)は、口約束であっても実際にお金の引き渡しがありさえすれば有効に成立します。

そのため、もし契約書がなかったとしても、銀行振込などの形で貸し手から借り手に対してお金が振り込まれている事実があれば契約の立証が可能になる可能性が高いです。

「この日にお金を振り込んでいるから、自分は確かにあなたに対してお金を貸した」という主張をされた場合、もし裁判になったとしたら何らかの形でこれを反証しなくてはなりません。

例えば、「お金は借りたのではなくてもらった」という主張をすることは考えられないことはありませんが、普通他人同士であればお金をタダであげるようなことはありませんから、これは難しくなります。

また、「なんらかの仕事を依頼されてその代金としてお金を受け取った」というような主張をするとしても、今度はその仕事依頼の内容をあなたの側が立証しなくてはならなくなります。

こちらも契約書などは普通ないでしょうから、基本的に事実と反することを立証するのは難しいと言わざるを得ません。

契約書は必ずお金を受け取ってから作る

逆に言うと、お金はまだ実際に借りていないのに、契約書を先に作成してしまったことでトラブルになってしまうことは少なくありません。

例えば、「100万円を貸す、借りる」という口約束をし、その後その内容の契約書を作成したとします(お金のやりとりはまだしていません)

その後で「それではお金を貸してください」とあなたが相手に頼んだとしても、「もう貸したはず」と相手が言い出すと契約書があるので文句が言えない...という状況になってしまいかねません。

つまり、実際にはお金が動いていないのに契約書の存在を根拠にお金を借りている扱いにされてしまうということですね。

もしこの状況で相手に裁判所に訴えられてしまうと、「実際にはまだお金を借りていない」という立証をすることは極めて困難と言わざるを得ません。

このようなトラブルになってしまわないように、お金を借りるための契約書を作るときには必ず現金を受け取ってから契約書の作成をしなくてはなりません。

親族間での口約束でもお金を返さないといけない?

法律上、親族間であっても契約は有効に成立します。

つまり、親族から口約束でお金を借りた場合であっても、現金の引き渡しがあれば契約は成立していることになります。

万が一裁判になってしまったような場合には銀行振込などの履歴を証拠に返還請求をされてしまう可能性があります。

ただし、夫婦間の契約については少し内容が特殊です。

具体的には民法第754条という法律があり、「夫婦間でした契約は婚姻中はいつでも一方からの意思表示で取り消しができる」というルールになっているのです。

ただし、夫婦関係がすでに破綻しているような場合には夫婦間の贈与契約などを取り消せないとしている過去の裁判例がありますから、もし裁判になったような場合には、夫婦の婚姻関係の実態などから返済義務が判断されることになります。

口約束に時効はある?

法律上の権利は10年間行使せずに放置していると時効によって消滅します。

口約束の借金であっても、金銭の受け渡しをしてから10年間なんの音沙汰もない...と異様な状況の場合には時効が成立する可能性があります。

ただし、時効は貸し手の側から書類で「返してください」という意思表示をした時点でカウントがリセットされてしまいます(これを時効の中断と言います。通常は内容証明郵便などを使います)

例えば9年11ヶ月まで経過した時効であっても、そのタイミングで貸し手の側からアクションがあると時効は成立しないことになります。

利息はつけないといけない?

利息についてなんの取り決めをしていなかったような場合には、民法の規定では年5%の利息が自動的につくことになっています。

もちろん、貸し手の側が利息の請求をしないと契約で定めていたような場合には無利息での貸付を行ったことになりますから、後から利息をつけたいと言われても断ることはできます。

また、貸したお金に利息をつける場合には法律上の上限が設けられています。

具体的には、利息についてのルールである「利息制限法」という法律によって以下のように上限利率が決まっています。

貸付額10万円まで:上限利率は年20%
貸付額10万円~100万円まで:上限利率は年18%
貸付額100万円~:上限利率は年15%

この上限を超えるような形で利息を請求した場合にはその超過分については利息は無効ですし、もしすでに利息の支払いをしてしまったような場合には返還請求をすることが可能です。

さらに、あまりに高い利率で利息を請求したような場合には貸し手側に刑事罰が課せられる可能性もあります。

「出世払い」でお金を借りたら返さないといけない?

「将来、出世したら返しなさい」といったような形で親族などから教育費などを出してもらうことは少なくありませんよね。

いわゆる「出世払い」ですが、この出世払いについて「どうなったら支払いの義務が発生するのか」ということは昔から問題に問題になるポイントです。

結論から言うと裁判例では「支払える見込みが立った時点」で支払い義務があるとしたものが多いです。

また、「出世の見込みが現実的に考えてない」と判断された場合には返済義務が生じる可能性もあります。

いずれにしても具体的にどのような内容の約束をしたのかによって個別具体的に判断していくのが裁判所のスタンスと言えるでしょう。

口約束での借金返済義務「まとめ」

今回は、口約束でお金を借りた場合の返済義務や法的拘束力について解説させていただきました。

本文でも解説させていただいた通り、お金の貸し借りの契約は「お金を引き渡した時点」で有効に成立しています。

口約束であっても返済義務は基本的に免れることは難しいですから、トラブルを避けるためにも誠実に話し合い等で解決する道を探るのが賢明と言えるでしょう。

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